こんにちは。コロ助(@xsasbabxb)です。
今回は司法書士試験択一に過去問集は必要かという話です。
そういう声が聞こえてきそうです。
たしかに合格体験記には「過去問集を10周回して合格した!」という人もいますし、「過去問の大切さ」を強調されている人もたくさんいます。
受かるために過去問を何回も解くのはこの試験の常識かもしれません。
しかし、
司法書士試験択一に過去問集は必要ない!
というのがぼくの結論です。
過去問集を使わずにテキストと出るトコだけで司法書士試験に2度目で合格した(午前32・午後29)ぼくが「司法書士試験の択一に過去問集が不要な理由」を今日は掘り下げていきます。
Contents
ぼくの経験(オートマテキスト)
以前ブログにも書きましたが、ぼくは過去問集を買ったものの結局手が回らず、ひとつも触れることができませんでした。
参考記事:折り返し地点に来ました。
しかし、それでも択一は基準点に36点上乗せして合格しました。
解いた過去問は、オートマテキストに載っている問題だけです。
と言われそうですが、ごもっともです。
たしかにぼくは過去問を解きました。
ただ、オートテキストに載っている過去問でぼくが繰り返し繰り返し解いていたものは、オートマテキストに文章として書かれていないもので、重要論点を学ぶために解いていました。
もし、その重要論点が文章としてテキストに載っていたら過去問は何度も解いてません。
オートマテキストの弱点として網羅性の低さが挙げられますが、オートマテキストは付属している過去問で弱点をカバーしていたともいえます。
その点、ほかのテキストであれば、網羅性はオートマテキストに勝るものばかりでしょうからやはり過去問は必要ありません。
※2019年12月4日追記
オートマに載っていた過去問は、文章に載ってない論点を学ぶために解いていた面はありました。
ただ、今思うのはオートマテキストの過去問を解くことで「『抽象』と『具体』を繋ぐ練習」もしていたと思います。
なので、いくら網羅性が高くて「知識」が詰まったテキストを使ってる場合でも、
オートマテキストのように過去問が載っていないのであれば「過去問集はやったほうがいい」
というのが今ぼくが思うことです。
「抽象」と「具体」を繋ぐ『応用力』は『知識』とは別物だからです(応用力がもともと備わっていればテキストだけでOK)。
とはいえ、テキストがオートマではなくても、一般的にやられてる「過去問集ぐるぐる」は必要ありません。
たしかに試験の問題を解くには「具体→抽象→具体」の『応用力』は必要です。
しかし、『応用力』以前に『知識』がないと問題は解けません。
『知識』を定着させるには後述する通り、テキストが最強の教材です。
それに、「たくさんの過去問」を繰り返し解かなくても、「オートマテキストに載ってる程度の過去問」で『応用力』は身につくと思います。
ぼく自身、「応用力を磨く練習」はオートマテキストに載ってる過去問で十分でした(直前期の模試でも「練習」はしましたが)。
そのため、
オートマテキストを使ってるのであれば、過去問集は不要
オートマテキストを使ってなくても、分厚い過去問集は不要
というのがぼくの結論です。
「抽象と具体」は文章で説明するのは難しいので動画を撮りました。
司法書士試験はテキストこそ至高
ぼくが過去問集を使わずにうまくいった経験以外に、「過去問集が必要ない」と思う理由としてテキストの存在があります。
テキストは本当に素晴らしい教材です。
司法書士試験で出題されることは条文・判例
そもそも本試験で出題される知識は条文と判例が元になっています。
その条文・判例が手を変え品を変え、毎年出題されているわけです。
つまり、条文・判例の知識がしっかり身についていれば本試験で合格できます。
司法書士試験の過去問をやるのはたいへん
「過去に出題された条文・判例は再び出題されるだろうから過去問をやる。」
という考えはまっとうです。
ただ、過去問をやるといっても平成の問題を解くだけでも30年分もあります。
1周させることを考えるだけでも目が回るし、何周も回すと一体いくら時間がかかるのか・・・。
ぼくにはとても無理だし、多くの人にとってもたいへんでしょう。
テキストには条文・判例がまとまっているいるから効率的
過去問をやるのはたいへん。
そこで、テキストです。
過去問と同じようにテキストはみんなが持ってますよね。
過去問をやる人も、まずはテキストから入るのではないでしょうか。
そんなみんなが持っているテキストは、過去問を分析して作られているものです。
過去問に出題された条文・判例を体系的にまとめたものがテキストだといえます。
過去問だったら論点の重複があり(たとえば〇年で解いた論点が△年で出る。)、同じところを解く分時間がかかる上、記憶の整理に支障が出ます。
それに対してテキストは、誰かが苦労してまとめているだけあって実にムダがありません。
なので速く回せるし、頭がごちゃごちゃせず記憶の整理もしやすいです。
そうであれば、過去問を一つひとつ解いていくのではなく、せっかく誰かがまとめてくれたテキストを完璧に近づけたほうが合格するのに手っ取り早いです。
抽象的に理解することで未知の問題から答えを出す力がつく
過去問の知識は繰り返し出題されますが、同じ形で出題されるのはまれです。
なので、同じ知識を問われていても出題の仕方が違えば、答えられないこともあります。
そのため、過去問を完璧に解けるようになったからといって、同じ知識の問題が本試験でも解けるとは限りません。
テキストの場合、書いてあることは過去問と比べると抽象的です。
その抽象的なことを理解・記憶することであらゆる問題に対応できる力がつきます。
これまで出題されたことのない問題に対処できる応用力を身につけられるという点においても、過去問よりテキストのほうが優位性があるといえます。
以下のツイート(計4つ)では「知識の抽象化」についてぼくが深堀しています。
松本先生と山田先生の対談動画も非常に有益なので是非どうぞ。
松本先生(@matumoto_masa)と山田先生(@goukakucoach)の対談おもしろかった。
「知識の抽象化」という少し踏み込んだ内容をわかりやすく解説してくれています。
まだ見てない人は、お時間があるときにぜひどうぞ。https://t.co/owkF8Dx4cs
— コロ助 (@xsasbabxb) August 24, 2019
それでも司法書士試験で過去問は大事
ぼくはテキスト派です。
それでも過去問は大事だと思います。
過去問の必要性を感じて、実際ぼくは過去問集を買いました。
過去問が必要だと思った理由は主に2つです。
- 午後択一を速く解く練習
- 苦手な民法の強化
午後択一を速く解く練習
1つ目は、午後択一は速く解かないといけないため、問題演習を通して解くスピードを上げたかったことです。
午後は択一と記述を3時間で解かないといけないので、午後択一はスピード勝負です。
>>【司法書士試験】ぼくがとった午後択一の解き方はこれです。
ぼくは記述が苦手なので50分で午後択一を解くのが目標でした。
50分という短時間で解くにはただ単に正確な知識を有しているだけでなく、「問題を見て論点を見極め、素早く答えを出す力」が必要になります。
その力を過去問を解いて養おうと思ったわけです。
※2019年12月4日追記
「問題を見て論点を見極め、素早く答えを出す力」は、先ほど説明した「具体→抽象→具体」の『応用力』と言っていいと思います。
ぼくはオートマテキストに載ってる過去問でこの応用力を養っていました。
もし過去問をまったく解かず、直前期の模試だけしか解かなければ問題を解くのが著しく遅くなっていたはずです。
なので「過去問は不要」というのは言い過ぎでした。
しかし、(再三ですが)過去問はオートマテキストに載ってるもので十分というのがぼくの意見です。
過去問で知識の定着を図るのは悪手です。
過去問は同じ知識でもいろんな角度で問われることがありますが、それらを一つひとつ覚えるとなると頭に入れる知識の量が膨大になります。
それに、「似てるけど違う知識」が混在するので、頭の中もごちゃごちゃするでしょう。
頭がごちゃごちゃして整理されてないと、本試験問題を解く際に「記憶の引き出し」から知識を取り出すとき大変です。
一方でテキストなら抽象的な知識を一つ抑えればOKです。
そのため、記憶の負担も小さいし、頭も整理されてるので知識を取り出すのもスムーズになります。
また、過去問の知識は断片的(個別具体的)なので、そのままでは応用が利きません。
なので、本試験問題を解く際は、過去問の焼き回しのような問題でない限り、「具体→抽象」と応用が利く『抽象』に知識を一度持っていく手順が必要になるんです。
知識を『抽象』に持っていくプロセスに加え、「具体→抽象→具体」という過程も踏みます。
つまり、過去問で知識を得てる人は「具体→抽象→具体」のプロセスとは別に「具体→抽象」の過程も経ないといけません。
(知識の「具体→具体」のプロセスは踏めません。だから同じ知識でも問われ方が変わるとうまく答えられなくなるんです。)
一方でテキストで知識を得ている人は知識が抽象的なので、「具体→抽象→具体」だけで済みます。
どちらが大変かは一つプロセスが多い過去問です。
- テキストのほうが記憶の負担が小さいし、知識を取り出すのがスムーズ
- テキストで抽象的な知識を得ていれば、知識の抽象化プロセスがない
以上のことから、知識はテキストで定着を図り、過去問は「具体→抽象→具体」の練習にとどめるべきなんです。
問題を解くプロセスについて動画を撮りました
点が伸び悩む民法の強化
過去問集が必要だと思った2つ目の理由は、点が伸び悩む民法を強化したかったことです。
民法はテキストを読んで理解しているつもりでも、2016年はなかなか点数に結び付きませんでした。
>>【民法を最強の武器に!】ぼくがとった民法対策はこれです。【司法書士試験独学】
テキストだけで点がとれないのであれば、過去問を解くことによって実力をつけようと思った次第です。
商法・会社法、憲法、刑法の過去問も購入しましたが、それらは「ついで」です。
「手が回ればやろう」くらいに考えていました。
本試験で速く正確に問題を解くことを考えれば、本試験と同じ形式である過去問はアウトプットの貴重なツールです。
そのため、過去問が大事であることはぼくもよく理解しています。
司法書士試験のおすすめ過去問
過去問は貴重なアウトプットのツールです。
とはいえ、前述のとおりすべてやるのはたいへんすぎます。
また、長い解説もためになりますが、基本的にテキストに載っていることなので迂遠です。
そこでおすすめなのが『オートマ過去問』です。
『オートマ過去問』は、「コレだけ!」と山本浩司先生らオートマ実行委員会が集めた必要な問題から構成されています。
肢の重複もないと思われ、記憶に支障をきたしにくいです。
問題数が少ないし、解説もピシッとまとまっているのでガンガン回せます。
オートマテキストを使っている人はもちろん、過去問に費やす時間と労力は最低限に抑えたいという人は是非どうぞ。
おすすめ記事過去問以外にもぼくが使用した教材についてまとめてみました。
過去問中心の勉強法書籍
ぼくはテキストを繰り返して勉強しました。
でも、再三言ってる通り過去問を何回も回して合格する勉強法もあります。
そこで、過去問を使って合格された方の書籍をご紹介します。
7カ月合格法:柴田幸さん
本書は勉強法を模索しているときに『5ケ月合格法』より先に読みました。
内容は過去問至上主義で、素直におもしろかったです。
自分も努力して過去問をやりまくれば合格できそうな気もしましたが、ちょっとまねできないとも思いました。
著者の柴田幸さんはLECの司法試験講師である柴田孝之先生の奥さんで、幸さん自身は既に亡くなられてます。
幸さんは自分を極限まで追い込めるような方で、読んでいて圧倒されました。
「もしかしたら司法書士試験で頑張りすぎてしまったのかも・・・」
とすら思うほどです。
また、そんな圧倒的な努力家の幸さんも挫折を重ねたうえで合格されたのだと考えると、
「自分が壁にぶつかっても頑張ろう。」
とパワーももらえました。
ぼくは過去問中心の勉強法は取りませんでしたが、方法論としては参考になるところもあるので勉強法の試行錯誤を重ねてる人にはおすすめです。
また、努力をしてる著者の姿を今の自分に重ね合わせて「自分も頑張らなきゃ」と思えるので、すべての司法書士受験生にとって読む価値のある一冊です。
まとめ:優先度はテキストが上。
効率を考えれば体系的にまとまったテキストを何回も回したほうがいいし、力も短期間でつきます。
ぼく自身、過去問集に手を出していれば、試験までに記憶の定着が間に合わず、間違いなく落ちていました。
逆に言えば、過去問集をスッパリ切ることができたから合格できたといえます。
また、オートマテキストの過去問を解くことで「抽象と具体を繋ぐ練習」ができたと思っています。
この「具体→抽象→具体」の練習が直前期の模試だけなら、本試験問題が難しく感じたでしょうし、解くスピードも遅くなってたはずです。
ただ、「具体→抽象→具体」の練習はオートマテキストの過去問で十分でした。
そういうことなので、
択一の過去問集は時間がある人は解けばいいけど、時間がない人はオートマテキストをやりまくればいい。
オートマテキストを使ってない人も過去問は最小限でいい。
というのが結論です。
もちろん過去問をやるのは大事です。
『上位合格』を目指すのであれば、なおさら過去問は重要だと思います。
しかし、優先度的には
テキスト>>過去問
です。
なので限られた時間で『合格最低点』をとるのであれば、テキストに重点を置き、過去問は最低限にとどめるべきです(ちなみにぼくは117位だったのでまあまあ上位でした)。
と、ぼくの自論を語ってきましたが、過去問をガンガン解いて合格している人が多いのも事実です。
というかむしろ過去問集を解かないほうが異端です(今のところは)。
とにかく勉強法はいろいろあるので、ぼくの考えも参考にしつつ自分に合ったやり方を見つけてください。
合うやり方は本当に人それぞれです。
抽象と具体を繋ぐ応用が苦手なタイプな人は過去問集をある程度解くのもありだと思います。
特に「知識はあるんだけど、午後択一をもっと速く解きたい!」という人は過去問を解けばスピードアップするはずです(ただ、「知識」がちゃんと備わってる前提です)。
※この記事を見た人は以下の記事も見てます。
オートマ独学で合格をと願う新人受験生(但し高齢)です。ブログ楽しみに拝見させていただいております。厚かましいお願いで恐縮ですがご教示いただければ幸いです。オートマテキスト不動産登記法、会社法商法で新バージョンがでており、各々前年比30ページ程増えていますが、最新のものに変えて勉強すべきなのでしょうか(多分29年度分が収録されたものかと)。いずれ買い替える可能性は高いですが。
中野さん、いつも当ブログをご覧いただきありがとうございます。
基本的にテキストは新しいもののほうが望ましいです。
新しいものは法改正に対応しているということと、ときどき新しい内容が掲載されてパワーアップしていることがあるからです。
たとえば、オートマ民法Ⅱは第4版から第5版に改定されるにあたり、図解が増え、「譲渡担保」のページ数が増えました。
譲渡担保のページ数が増えたのはこれまでオートマの弱点といわれていた「譲渡担保の解説が少な過ぎる」点を克服できたのでぼく的に画期的な改定でした。
ただ、平成30年合格を目指すのであれば、もうあまり時間がないので今使っているテキストでいいと思います。
ぼくも去年気合を入れて全科目新しいテキストを買い直しましたが、時間がなかったので民法と不登法以外は1版、2版古いテキストを使ってました。
古いテキストを使う際は法改正に注意してください。
コロ助様
ご親切な回答ありがとうございました。過去、社労士・行政書士試験は独学でなんとか合格しましたが、司法書士試験は勉強のボリュームが違いますね。民法の改正もあり運を頼みに挑戦します。
社労士独学合格はすごいですね。
社労士もかなり難しいと聞きます。
民法改正は試験勉強をしているものからするとめんどくさいですが、仕方がないことなのでお互い頑張りましょう。
オートマ独学で司法書士試験合格を目指す中野さんを応援させていただきます。